2009年 04月 13日
女のからだ 江戸二 D楼 みずよ どうしてまた、こんなところへ戻つてきたんですかつて?そうね。あんたのような人の目から見たら、こんな四十づらさげてさ、紅いもんや、白いもんぬつたくつて、このランプの下に立つているあたしを、よつぽどあわれな人間だと思うにちがいないよ。 だけどさ、このハデな着物ぬいで、すつぱだかになつたあたしはさ、どつちみち女だよ。おしろいの下にかくれてるあたしの肌には、長年の苦界のしわが、いつぱいあるかもしれないよ。けどね⋯、しわを一枚ヒンムケば、その下にやあ、まだ女の血がながれてるのさ。年をとつて、ますます自分のからだのうまみを知つた女の血がね。(中略) あたしア、三十にならないうちに、このくるわからとび出したの、とび出したからつて、あたしが今までとおつてきたみちつてば、やつぱり紅いあかりのついたのれんの下さ。のみ屋、料理屋、おでん屋、かたいところじや旅館のお女中さんにもなつた。けど、駄目だつたのさ。あたしア正直いつて、男が欲しかつたのさ、いつも⋯。(中略) 考えてみりやア、つくづく女のからだつてぇヤツは、インガなもんさ。女の星つてのはかなしいもんさ。それが四十の坂をこして、いたいほど、思い知つたもんだ。この世の中の女つて女は、みんな男あつての女さ。それでなくて、なんのために女つていうりつぱなからだがあるんだよ。(中略) 男が夢中になつて入れあげる女の期間つてのはほんとにみじかいもんさ。花のいのちみたいに、はかないもんだよ。けどね、それからさ、それからなんだよ。きれいな花びらが散つてからなんだよ。女のからだが、ほんとうにもえてくるのは──。これが女つていうからだのさだめなんだよ。(中略) あたしが女のからだの動きのおもしろみやくるしみを知つているかぎり、そして、男つていう男のあらゆる瞬間のからだのうごきを知りつくした今になつては、あたしやそうしか云えないのさ。なるようにしかなれないつて⋯。いまのあたしア、ただ待つてるだけだよ。あたしを頭のてつぺんから、足のつまさきまで夢中にさせてくれるひとのことをね──。(よしわら/大河内昌子 編)
by hishikai
| 2009-04-13 00:40
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