2008年 11月 08日
ポンペイにある葡萄酒商人の邸宅の食堂。正面に祭壇と思しき遺物が見える。古代ローマの人々はあらゆる家庭に農園と家を護る神ラレスと、貯蔵場の神ペナテスが棲むと信じていた。そして食事の時には、この二神を左右にして中央に家族の守護神を配した祭壇で少量の食物を燃やしたという。 いま見えている食堂の祭壇も上部がアーチ状になった壁の窪みに納められていて、そのアーチの内部が煤けたように黒くなっているのだから、あるいはその儀式に用いたのかも知れない。祭壇の正面には神殿で見かける聖なる蛇のモチーフが刻まれているようにも見える。その上のレリーフは家族の守護神だろうか。 周囲の壁には深い青を地として神話に登場する神々と動物が描かれている。祭壇の手前、部屋の中央には泉水がしつらえてあり、オリーブの紋様を彫刻した噴水筒が立っている。客はその周囲に座を占め、部屋の片隅で演奏される音楽を聞きながら食事を摂る。 古代ローマの社交生活で饗宴は最も重要な行事である。招待客のリストは三人から九人までの人数になるようにつくられ、それは「グレースよりも多く、ミューズよりは少なく」と言い表わされている。グレースは美と魅力と幸福を与える三人姉妹の女神、ミューズは学芸と詩と音楽を司る九人姉妹の女神である。 客は靴を脱ぎ、ゆったりとした臥台に左ひじをついて横たわる。部屋は多くの花々で飾られている。花の香りはランプ油の匂いを消し、葡萄酒の酔いを覚ます。音楽家が左手でキタラという楽器を弾き、右手でハープを奏でている。やがて食事が移動式のテーブルに乗せられ運ばれてくる。今夜のメニューは何だろうか。 前菜 クラゲとタマゴ 塩漬けのウニを詰めた雌ブタの乳房 ミルクとタマゴで煮た脳みその鉢物 キノコ煮 コショウ入り魚油ソース添え ウニ、薬味、蜂蜜、油、タマゴのソース添え メインコース シカの蒸し焼き オニオンソース、イェリコ産のナツメ、干しブドウ、油、蜂蜜添え ダチョウの煮物 スイートソース添え ヤマバトの丸煮 オウムの蒸し焼き ブタ肉とマツの実を詰めたヤマネ イチジクと月桂樹の葉を煮込み、蜂蜜をかけ、パン粉をつけて焼いたハム ベニヅルとナツメヤシの煮込み デザート 薔薇を小麦粉でまぶしたフリカッセ 蜂蜜で揚げ、クルミとマツの実を詰めた種なしナツメ アフリカのスイートワインのホットケーキ、蜂蜜添え
by hishikai
| 2008-11-08 15:24
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