2009年 01月 02日
「みたま」を迎える日
e0130549_1363687.jpg酒田市から北西に約40kmの海を隔てて飛島がある。この島の里から岡を越えて西へ向かう小径の先に賽の川原があり、何人が積むとも知れない石の塔が幾つもある。言い伝えによると、この近くの山で草を刈っていると、佳い声で唄を口ずさみながら通って行くのを聴くことがあり、そういう時にはきっと村で誰か死んでいる。

あるいはこの小径の脇に住む老人が、夜更けに何か独り言を呟きながら登って行く声を聴くことがある。あゝまた誰か死んだなと思うと、翌日には村から葬式が出る。時には啜り泣きをして行くのもあれば、はァとただ一つ溜息が聴こえたり、そうかと思うと気楽そうに鼻唄で登って行く女もあるという。

これは昭和二十年、柳田国男によって書かれた『先祖の話』に記された言い伝えなので、現在のことではない。島の墓所は他にあるのだろうから、賽の川原は幽界への入口であろうか。ともかくも、こうして幽界へ逝った人々は「みたま」となり、御先祖様となり、村の祭事には再び帰って懐かしい人々と暮す。

正月と盆は、曾てそのような先祖祭であったと柳田国男は言う。徒然草には晦日を「亡き人の来る夜とて」とあり、元旦に先立って魂祭のあったことを証している。これが十万億土の彼方より帰り来るとか、地獄の釜が開くなどと言い習わしてから、死者を何か穢れたものとして、正月より切り離してしまったのではないか。

だが私達の先祖の霊は子孫が年々の祭祀を行う限り、永くこの国土にあって時を定めて故郷の家に往来した。そして日頃には清らかな山の高みにあり、春の始めには里に降って田のものの生育を助けると信じたのだ。その時人々は極楽を他所に持ってはいなかった。どこまでも故郷を愛したのだった。

─新年の詞─ 当ブログを御覧の皆様、新年明けましておめでとうございます。昨年は年末の記事に御礼も書かず、また新年は元旦のアップもせずにおりましたこと、ひとえに私の怠惰の故と恥入る次第です。当ブログは今年も更なる内容の充実を目指す所存ですので、何卒引続きの御高覧をお願い申し上げます。

ブログランキング・にほんブログ村へ

by hishikai | 2009-01-02 01:56 | 文化


<< 人間宣言      椿 >>