2009年 03月 04日
英国保守主義の三原理
e0130549_1410285.jpg我国で保守的という言葉は否定的な意味合いに使われることが多い。ましてや保守主義者などと名乗ることは、ほとんど自分が右翼か国粋主義者であると宣言したに等しい。こうした世間の見方は進歩こそ正義であるという後発国根性の賜物で、我国のように永い歴史を誇る国にあっては実に矮小な了見と言わざるを得ない。

だが一方で保守主義が体系的な理論を持たないことも一因となっている。これを補強するには16世紀のR・フッカーから18世紀のE・バークを経由して20世紀のM・オークショットに至る英国保守主義者の言説を貫く三つの原理が参考になる。そのことをA・クイントン『不完全性の政治学』を道標にして以下に述べる。

第一は伝統を大切にすること。それは確立された習慣や制度に対する愛着や尊敬となって現れる。社会の秩序は、誰とも特定できない多くの先人たちの実際的な智慧の結晶であるということ、あるいは政治的決断を下さざるを得ない状況下で行われてきた適応修正の結果であるということ、その考え方を指す。

第二は社会を有機体と考えること。それは社会を構成するのが抽象的な個人などではなく、家族や地域社会や職場の中で歴史的に受継がれた慣習や制度に織込まれて独特の社会性を持つに至った人間であるということ。社会の制度が人間を社会的存在にする。社会はそのような働きをする生きた全体であるという考え方を指す。

第三は政治に懐疑的であること。人間社会の諸問題を適切に解決するための政治的な智恵は、孤高の思想家たちの思弁的な理論や、それに基づいて設計された政策の中にではなく、永い歴史を通じて社会全体に蓄積されてきた経験の中にこそ見い出されるのであって、政治はそれを調整する手段に過ぎないという考え方を指す。

これら三原理、つまり伝統主義と有機体主義と政治的懐疑主義は、いずれも一個の人間は道徳的にも知的にも不完全なのだという観察に支えられている。そしてそのような人間の不完全性を、理性の力で叩き直すことなど出来はしないということも同時に知っている。だから人間は過去の人々の経験を必要とする。

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by hishikai | 2009-03-04 13:57 | 憲法・政治哲学


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