2008年 07月 03日 ( 1 )

2008年 07月 03日
江戸の夏
e0130549_1024593.jpg目には青葉山ほととぎす初鰹

江戸の夏は鰹とほととぎすで始まる。人々の話題もひとしきりこれに集まり、知った顔が道端で会うと「おう、聞いたかい」「むむ、そっちこそ食ったかい」と、こんな挨拶もかわされる。初鰹の値は一ぴき三両はしたというから馬鹿々々しい。これがどこそこへ売れたといえば噂となる。当時は芥子で食べたらしい。

初鰹にわかに安くなるさかな

日を重ねるうちに鰹の値も十分の一となり、やがて二十分の一ほどとなる。とはいえ江戸っ児の体面からして、あまり安いのもいけない。これは相棒のほととぎすも同じことで、山の手あたりでしきりに鳴くようになると、かしまし山のほととぎすなどといって、誰もがきれいさっぱり忘れてしまう。

かんざしで星の名をきく夕涼み

暑さの名残りと暮しのにおいが交差してたちこめる往来も、夕方になると水が打たれて潤いを取り戻す。大人は板の間を拭いた水をまき、子供はたどたどしい手つきで白粉花に水をやる。湯屋から帰って夕飯がすむと、ご近所が縁台に集まって空を見上げる。吉原つなぎの鳶の親方、なるみ絞りのおかみさんの姿もある。

借金をいさぎよくする祭り前

五月の川開きに次いで、六月ともなると江戸は祭に沸き返る。日吉山王、鳥越、浅草の三社権現。中でも将軍家を氏子に持つ山王祭は盛大で、天下祭と異称される。山車が四十五台、神輿の行列その他いろいろで四キロに及ぶ長蛇の列が市中を巡って将軍閲覧となるから大変だ。揃いの衣装やら何やらで借金をする者もある。

弁天は蓮華の中に御宮なり

水の名所は隅田川の他に不忍池があり、ここは紅白の蓮華が美しい。明けるのが早い夏の朝を待切れずに、多くの人が訪れる。蓮華の開く音を聞くのだという。そうした音が本当にするのかは定かでないが、なにしろ早起きは三文の得なのだ。中之島には弁天堂があり、ぐるりを蓮華で埋めて竜宮さながらとなる。

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by hishikai | 2008-07-03 10:44 | 文化