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2009年 02月 18日
酒談二題 ─葉隠聞書より─(現代語訳)
e0130549_017548.jpg上野利兵衛のこと

上野利兵衛は、江戸で雑務目付を勤めていた折、若い男を手先として使っていた。八朔の前夜、御歩行目付の橋本太右衛門と酒を飲んで正体なく酔い、手先の男を従えて帰路に就いたが、道々散々な悪態をつき、その揚句、自分の屋敷の前でその男を斬ろうとした。

男は刀のこじりを跳ね返して利兵衛と組合い、そのまま二人は溝へ落ちた。利兵衛は下に、男が上になって押えているところへ、利兵衛の下男が駆けつけて「上が利兵衛様か、下が利兵衛様か」と叫んだ。利兵衛が「下が利兵衛だ」と答えると、下男は上になった男の背中を斬りつけた。が、傷は浅く男は走って逃げた。

この事件が聞こえてお取り調べとなり、利兵衛は入牢申し付けられて、後に縛首に処せられた。利兵衛の下男は国許の者だというが、身分の低い者にしては、勇ましいはたらきであった。酒の相手をした太右衛門は、取り調べ中に自害して果てた。力が入らぬほどに酒を過ぐるは、腰抜け者で武道不覚悟である。

福地吉左衛門のこと

鍋島勝茂公が客を招いて酒宴を催されたとき、鶴の料理が供された。客の一人が「公は料理された鶴を、これは白鶴、これは黒鶴、と食べ分けられるとうかがっていますが、それは本当ですか」と云った。「確かに食べ分けます」と勝茂公がお答になると「しからば、只今のお料理の鶴はいかがですか」と尋ねた。

勝茂公は「真鶴です」とお答になったが、客達は「どうも信じ難い。お料理人に確かめてみたい」と云い出したので「福地吉左衛門を呼べ⋯」との仕儀になった。事の成りゆきをものかげで聞いていた吉左衛門は急いで台所へと行き、大盃で立て続けに数杯を飲み干した。

お召しである、と云ってたびたび人が来たが、やはり酒を飲んでいる。ようやくのこと吉左衛門が酒宴の座に参上し、客達がお料理の鶴のことを尋ねたときには、すでに「真白鶴でござる。いや黒鶴、いや白黒鶴で⋯」と、舌のもつれた返答であった。「飲過ぎたな」勝茂公は一言叱ってお返しになり、鶴の詮議はそれぎりとなった。

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by hishikai | 2009-02-18 00:34 | 憲法・政治哲学