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2009年 06月 16日
バランス・オブ・パワー
e0130549_23283458.jpg第28代アメリカ合衆国大統領W.ウィルソンはバランス・オブ・パワーを、人民の利益を無視して政治的都合から国家をチーズのように切り分け、なおかつ戦争を引き起こして平和を破壊する邪悪な政治原則だとして嫌悪した。バランス・オブ・パワーに対する彼の認識は、ある意味で正しく、ある意味で誤っている。

主権領土国家こそが国際組織体の中で最も支配的な形態なのだということが公式化された1648年のウェストファリア条約以来、今日までの歴史はまさに戦争の歴史であった。その中で例えばポーランドは十八世紀から1939年までに四度チーズのように切り分けられた。この意味でW.ウィルソンの認識は正しい。

だが国際社会に軍事力を背景とする行動の全てを邪悪だとする統制は倫理的にも法的にも存在しない。また国家がバランス・オブ・パワーの原則を自らの政策判断に含めようとするのは、平和を維持するためではなく、独立を維持するためである。この意味でW.ウィルソンの認識は誤っている。

ここからバランス・オブ・パワーを考える上での二つの基本的な前提が見えてくる。(1)国際政治の構造は無政府的国際システムである(2)国家は自らの独立を至高のものとみなす。これである。国際社会について現実的な立場から何事かを考えるならば、この二つの前提を忘れるべきではない。

e0130549_11552872.jpgその上でバランス・オブ・パワーはアンダー・ドッグ(負け犬)を助けよと教える。トップ・ドッグ(勝ち犬)を助ければ、トップ・ドッグはいずれ向き直ってこちらを食おうとするかも知れない。諸国家は弱そうな方に味方する。これがバランス・オブ・パワーの政策的な原則である。パワーの不均衡は危険なのだ。

1941年にA.ヒトラー率いるドイツがソ連に侵攻したとき、イギリスの首相W.チャーチルはこれまで罵倒の相手だったスターリンと同盟すべきであるとしてこう語った。「もしヒトラーが地獄に侵攻するならば、私は悪魔についての褒め言葉を下院で述べてもよい」バランス・オブ・パワーの考え方を示す一例である。

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by hishikai | 2009-06-16 00:06 | 憲法・政治哲学