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2009年 09月 07日
鳩山論文に就いて
e0130549_13252128.jpgVOICE+に掲載された論文『祖父・一郎に学んだ「友愛」という戦いの旗印』の中で鳩山由紀夫民主党代表は、自由と平等という長いあいだ近代人を悩ませ続けてきた二つの概念と、自身の掲げる友愛との関係について多くの字数を費やしながら述べている。

ここで彼は1935年にC.カレルギーが自由と平等の均衡を図る目的から自著で「友愛」の理念を提唱したこと、祖父・鳩山一郎がこの「友愛」に共鳴したこと、これが自民党の労使協調政策に影響を与えて日本の高度経済成長期を支える思想的基盤になったことを紹介する。

その上で、今日の道義と節度を喪失した市場至上主義に対して歯止めをかけ、国民経済と国民生活を守っていくという課題のもと、彼は友愛を自由の本質に内在する危険を抑止する役割を担うものとして位置づけ、これを旗印として立とうと決意したのだという。

この辺りの論の運びはいかにも「スマート」だが、要するに彼は自身の考える今日的な要請から、かつては自由と平等の仲裁者であった友愛の理念を、平等の擁護者へとその解釈を根本的に変更し、その上で自身の標語に採用したということである。

もっとも彼の率いる民主党が打ち出した富の再分配を強く押し進めようとする政策の、その動機を自由と平等の問題という把握の仕方で説明しようとしたことは、わが国の政治風土あるいは国民一般の意識のあり方を考えれば評価に値する。

しかしながら彼が自由と平等の問題に、友愛というどこからどう見ても道徳的な理念を持ち込んだことは「自由/平等」という政治の問題を──これまでもそのような傾向は多分にあったが、なお一層──「不平等/平等」という正邪の問題に変質させたように思われる。

そして今回の政権交代が本格的な二大政党制への契機であるとしても、政権党がどちらであれ富の再分配の是非が正邪の問題である限り、自党の政策を「不平等ではありますが何卒ご理解を…」などと説明することはできず、したがって争点は平等の多寡でしかなくなる。

そうなれば、所得の使い道こそ最も端的に表明された人間の自由であるという主張はエゴイストの戯言となり、富の再分配の彼方には強制収容所が控えているという主張は笑い話となる。そして革新党は格差是正から、保守党は愛国心から富の再分配を要求することになる。

1951年、ニースのアパートで、お気に入りの鳩をスケッチする82歳のH.マティス

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by hishikai | 2009-09-07 13:29 | 憲法・政治哲学