2009年 07月 13日
十八世紀フランスのコンドルセー侯爵は「ある選択肢が他の全ての選択肢と対決して、多数決で勝者となるならば、その選択肢こそ社会的に容認されるべき最良の選択肢である」と述べた。これはコンドルセーの条件と呼ばれるが、しかし同じ彼の研究がこの条件の容易に成立し難いことを明らかにしている。 例えばここにA氏、B氏、C氏の三名がいて、三つの選択肢について、彼らそれぞれが次のような選好順序を示しているとする。 A氏 うな重 > 親子丼 > ペヤングソース焼きそば B氏 親子丼 > ペヤングソース焼きそば > うな重 C氏 ペヤングソース焼きそば > うな重 > 親子丼 まず、うな重と親子丼を三名の投票にかけてみる。すると二対一でうな重(うな重は親子丼よりも旨い)が選ばれる。次に、親子丼とペヤングソース焼きそばを三名の投票にかけてみると、二対一で親子丼(親子丼はペヤングソース焼きそばよりも旨い)が選ばれる。 この二回の投票結果を考えるならば「うな重はペヤングソース焼きそばよりも旨い」と結論されて良さそうである。だが念のために、うな重とペヤングソース焼きそばを三名の投票にかけてみると、二対一でペヤングソース焼きそば(ペヤングソース焼きそばはうな重よりも旨い)が選ばれてしまう。 ここから解るように、二者択一による多数決投票方式では投票にかける順序によって矛盾が生じ、構成員の選好を一意的に導き出すことができない。このような場合、常に「最後に比較されるものが勝者となる」のが鉄則である。政治のカードは最後に切る者が勝つ。 これは投票という具体的な行動だけではなく、公約を発表する順序、そのことで投票者の関心を推移させる順序にも応用することができるであろう。例えば自由民主党の立場からすれば、政権交代vs.景気対策──その勝者であるところの──政権交代vs.地方分権という順序で世論が争われるならば、衆議院選挙に勝利することができる。 A氏 政権交代 > 景気対策 > 地方分権 B氏 景気対策 > 地方分権 > 政権交代 C氏 地方分権 > 政権交代 > 景気対策 とはいえ都議選に大敗を喫した今日より以降の段階で地方分権のカードを切っても、さすがに真実味に欠けて効果がない。もはや逆転のタイミングは過ぎた。同じ敗れるなら都議選の前にカードを切るべきであった。ここに至っては東国原知事もゲームから降りるであろう。自由民主党は民主主義の素顔と、そこから導かれる政治技術を知らないのだ。
by hishikai
| 2009-07-13 00:56
| 憲法・政治哲学
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