2008年 12月 22日
政府は個人生活を保障すべきという主張が再び台頭している。この主張の危うさは、これと本質を同じくする社会主義や共産主義という計画経済の失敗によって明らかだが、それが繰返されるとき人々は失敗の原因について、経済非効率性という一見修正可能な問題を語り、より本質的で修正不可能な自由の問題を語らない。 人間には自由がある。自分の運命に、自分の環境に自分なりの態度をとるという人間としての自由がある。そのことで人間は人生を自分のものとし、やがて迎える死に対しても何ごとかの態度を示すことができる。それがどんなに惨めなものであろうとも、これが自分の人生だという自負に国家の恩寵が勝ることはない。 この自由を取り上げることはどんなに殊勝な国家機関にもできないし、またするべきでもない。これを取り上げられた人間が生物としての死を迎える以前に、存在としての死を迎えることは過去の歴史が教えている。計画経済は人間の核心、この自由を完全に見落としている。 なぜ計画経済が自由を見落とすのか、私は詳しくは知らない。しかし印象として、彼らが人間に経済的な問題から解放された後に営むべき「人間らしい生活」があると考えているように見える。だがその心理は物質生活を侮蔑している。その解放は善意の看守が人間を清潔な牢屋に閉じ込めることに他ならない。 いやそれは甘い、本当に貧乏になったら人間に自由などないという意見もあるだろう。だが少なくとも私は、各所の喫茶店のランチのサンプルを貰い歩く貧乏暮らしから、人間を最も明るく照らすのが運命と戦う白熱で、その白熱に照らされて人間は始めて自由なのだという、彼らの考えとは正反対の事実を以前に学んだ。
by hishikai
| 2008-12-22 14:31
| 憲法・政治哲学
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