2009年 03月 06日
ここ数日は絵に描いたような貧乏暇なしで返事が遅くなってしまいました。誠に申し訳ありません。この話は少々長くなりそうなので、こちらに記事として書きます。その前に、以下に使用する用語は専門的な方面から見れば誤りが多いと思いますが、これは私の勉強がいい加減なためです。先ずその点をご承知置下さい。 仰ることはよく判ります。せいろん談話室でもそうでしたが、ある年代の方々の中には保守主義を名乗りながらも、実際は戦後の復興と自身の仕事の足跡を重ね合わせて、これを賞賛しているように見受けられた方もあり、私はそのような投稿を読むと「この人が保守しようとするのは戦後ではないか」と首を傾げたものです。 そうした見方からすれば、我国の江戸期から明治、そして戦後と千変万化の政治状況の変化に対して、我国の保守主義が一体何を基軸として、何を保守すべきなのかという問題は当然のように浮び上がってきます。 ところで、17世紀以降の西欧に於ける近代政治思想には「国家/市民社会」という区別が重要な前提としてあり、特にホッブズからヨーロッパ大陸のカント、ルソーへと至る思想家達は、如何にして市民社会の混沌に秩序を与え、これを善き国家へと連結させていくかに苦心しました。 今回取上げた英国保守主義もご多聞に漏れず「国家/市民社会」の区別を前提としていますが、彼らは「市民には市民の経験的な私的自治がある」と考えて、これを意識的に国家へ連結しようとはしませんでした。彼らは国家と市民が理論で架橋されることを信じなかったのです。 どちらの考え方が良いかは別として、我国では「国家/市民社会」という区別そのものに馴染みがありません。それは市民社会というバタ臭い言葉にも原因があるでしょうが、それよりも私達日本人が統治者の政策と私達の日常生活が、あたかも一蓮托生のことであるかのように捉えている感覚に因ると思います。 しかし現実の生活に省みて、私達が最も長く付き合わなければならないのは、生まれつきの才能や、資産の多寡や、家族の愛情や、幸運や不運といったことによる人生の問題です。確かに明治政府の発足は歴史的事件ですが、同時にそのとき寒村の生活は昨日と同じ今日が黙々と営まれて、人は人生に悩んでいたと思います。 そしてそのような人生の問題が人の一生で最も長く付き合わなければならず、人の圧倒的多数がそうであるのならば、人間はそもそもどのようなものであるのか、人間の集まりである社会とは何かといったことを、国家とは区別された市民社会という視点から考えてみることは、日本人といえども重要なことであると思います。 市民社会が馴染みにくい言葉であるのならば、民草の生活といった言葉でもよいと思います。そして私達が、そのような民草の生活に渾身の共感を抱く時に、やはり民草の生活の永い時間の産物である慣習や文化、その淵源であるところの天皇陛下の御存在にも限りない愛情が生ずるのではないでしょうか。 この徳川や薩長といった体制の性質に関係なく歴史の中に存在してきた、天皇陛下と民草という二本柱こそ「日本」です。例えば二二六事件蹶起将校が陛下を貧民救済の象徴と考えたこと、被差別民解放を訴えた水平社の人々が行幸に接し陛下の御手が彼らに振られて歓喜したことも、そのような考え方に基づいているのだと思います。 我国の保守主義が一体何を基軸として、何を保守すべきなのかという問題について、私の場合は以上に述べました民草の生活を基軸として、政府に頼らない日本人の自立性を保守すべきと考えております。もっともこれは、現在では保守ではなく回復が望まれるものです。 しかし、かつての日本人には、お上に頼らない私的自治が在ったと私は思います。そのことが『逝きし世の面影』についての記事で言いたかったことです。現在の私達は自身を国民と称しますが、本来私達は国民というような国家に取り込まれた存在ではないはずです。 だんだんピントがずれていくようなので、この辺で終わりにします。最後に小泉改革と保守主義の関係ですが、あれが自由主義的改革であるのならば、それは保守主義と自由主義の関係になると思います。そして英国保主義者の呼び方に従えば自由主義は「世俗的保守主義」です。 英国保守主義者が人間の不完全性を考えるとき、そこにはキリスト教的な原罪意識があります。自由主義者も人間は不完全であると考えますが、それは現実の必要からくるものです。つまり自由主義は保守主義の宗教的な要素を人間の現実から追求した思想です。この辺りは我国でも神道との関係で表れていると思います。
by hishikai
| 2009-03-06 03:32
| 憲法・政治哲学
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